ウォルファースが学校でおこなった研究ハリー・ウォルファース博士は、これまでの知見に基づいて、学校の環境条件を設定すると光や色によって特定の生理学的な機能、行動、学習の成果がどう変わるかを評価するために、一連の実験を行うことにした。1981年、同僚のキャサリン・サムとともに、博士はカナダのアルバータ州エドモンドにある障害児の学校、エルビス記念児童開発センターで研究を行った。二人は、選んだ色とフルスペクトル照明を併用すると行動や生理学的な機能にどんな影響が現れるかを評価した。対照は、重度の行動障害をもつ眼の見えない子供と、目の見える子供の両方である。生理学的な機能と行動は、フルスペクトル照明を設置する前と後でモニターチェックされ、教室の壁は暖色系の色調を選んで塗り替えられた。 色の塗り替えに際しては、H・アーテルの成果を参考にした。アーテルは、黄色やオレンジ色などの明るい暖色の壁にすれば学童の知能指数(IQ)や学業成績が向上することを発見している。その結果は非常に有意義であった。壁を塗り替えた教室でフルスペクトル照明を使うと、収縮期の血圧が平均して20下がり、行動(特に攻撃性の低下)は格段によくなった。しかしながら、フルスペクトル照明を元のクールホワイト蛍光管に戻すと、血圧は上がり、子供たちの行動も元の戻ってしまった。もう一つとても興味深かったのは、盲人の被験者も目の見える被験者と同じように影響を受けたことである。 この研究によって光と色とが精神生理学と行動に効果のあることが確かめられたが、色の効果と光の効果の区別はできなかった。この区別をはっきりさせるために、ウォルファースは新しくてわかりやすい研究を考案し、その中で以前よりも多い変数を同時に評価した。1982年度から83年度にかけて、彼は、カナダのアルバータ州ウェタスキウィンの四つの小学校で同じような条件を整えて、同時にさまざまな研究を実施した。壁の色を従来のオレンジ色、白、ベージュ、褐色から薄青色、暖色系の薄黄色に替え、クールホワイト蛍光灯をフルスペクトル蛍光灯にかえた。研究の目的は、周囲の照明と色の条件あるいはそのどちらか一方をいろいろに変えたときに、収縮期の血圧、心の状態、病気による欠席、児童がしかられた全行動、教室の騒がしさ、IQ値、学業成績への影響を一年間通して評価することである。変更条件は学校ごとに次のように決められた。 1「学校一」は対照として選ばれ、もともとの条件のままである。 2「学校二」は照明と壁の色を替える。 3「学校三」は照明だけ替える。 4「学校四」は壁の色だけ替える。 結果は驚くべきものだった。しかられた行動を除いて、あらゆる評価項目で最高の結果をあげたのは照明と壁の色の両方を替えた「学校二」、一貫して最悪の結果となったのは照明も壁の色も従来のままの「学校一」であった。「学校二」の生徒は、ストレスが減り、おとなしくなり、ふさぎ込むことも減って、学業やIQ値の向上が最も大きかった。「学校一」に比べて、病気による欠席数はわずか三分の一である。しかられた行動が一番少なかったのは、壁の色だけ替えた「学校四」である。これによって、誤差が入り込む余地は著しく減っている。こうした驚くべき結果と、ウォルファァース博士が世界的な色の研究者であるという事実を勘案すれば、子供たちの教室をどうして暖色系の壁とフルスペクトル照明で設計しないのか誰しも不思議に思うだろう。
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紫色の絵画
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光による様々な効果
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